『沈黙』遠藤周作

遠藤周作に『沈黙』(新潮文庫)という作品があります。

舞台は江戸時代。キリスト教は禁制となり、苛烈な弾圧、取り締まりが行われます。

その中で、主人公の宣教師はずっと神に祈っていました。信仰について、問いかけていました。しかし、神は“沈黙”したまま、答えようとしません。神は彼を見捨てたのか。導くことを放棄したのか。そして、彼は“踏み絵”に臨むことになります。自分がどうしたら良いのかわからない。何が正しいのかわからない。彼は苦悶します。そして……。

最後の最後、踏み絵に描かれたイエスが語りかけます。その内容については、ここでは触れずにおきます。

映画『コンタクト』で、女性科学者は言います。「神が人間を作った。人間が、心の平安を求めて神という概念を作った。どちらが合理的かしら」

私も、人格を持った神が存在するとは思っていません。しかし、神はいるのだと思います。それは、手垢のついた表現ですが、私たち一人ひとりの心の中にいるのだと。

全細胞を使って、全神経を稼動させて、自分の全存在をかけて思い、悩み、答えを、助けを求めた時、心の奥底から聞こえてくる声。その人が生きてきた時間のすべて、見たこと聞いたこと、体験したこと経験したこと、思ったこと考えたこと、嬉しかったこと悔しかったこと怒ったこと悲しかったこと、それらをひっくるめたトータルな自分が、自分自身に語りかける声。

私は、それが神の声であり、神なのだと理解しています。

如何に生きたか。それが問われます。