ムトウの日

昨日に続いて、6月10日は“ムトウの日”ということで。

ムトウといえば、武藤敬司闘魂三銃士の先陣を切ってメインイベンターに抜擢された武藤。与えられたニックネームは“スペースローンウルフ”。入場時にはフルフェイスのヘルメット。そこには“610”の文字。

そのダサさと華麗で説得力のある戦いぶりのギャップが魅力でした。オレンジ色のショートタイツ姿になるのは、もう少し後。そんな時代もありました。

それは前振り。私が“ムトウ”といって思い出すのは、氷室冴子の小説『海がきこえる』です。

ヒロインの高校生の名前が“武藤里伽子”。語り手は同級生の杜崎拓。

東京から高知に引っ越してきた里伽子は周囲に心を開かず、拓はそんな里伽子の様子が気になります。そして、よりによって親友の松野豊が里伽子を好きになります。

理解不能な“都会の女の子”に振り回される拓。しかし、作者の氷室冴子は言います。「男にしてみれば、何を考えているかわからないかもしれないが、女の私にしてみれば、特に個性的というのではない、どこにでもいる女の子を描いた」と。

興味を持ってくださった方は、どうぞ、当ブログの過去のタイトル「私の好きな作家:氷室冴子」をご覧ください。

この『海がきこえる』のアニメ版は、文庫のカバーイラストをご覧いただければわかるように、スタジオジブリが制作しました。若手スタッフが作ったこの作品を観て、宮崎駿は「若い男女が好意を持った相手にはっきりと意志表示しないのはおかしい」と言って、自身が監督した『耳をすませば』で、物語の終盤、登場人物の中学生に「結婚しよう」という台詞を言わせたそうです。

小説版はアニメ版よりも、拓の東京での学生生活にもページが割かれていて、やはり田舎から東京の大学に進学した自分自身と重ね合わせて読んだということもあり、とても印象深く、今もしっかりと本棚に並んでいます。

海がきこえる (徳間文庫)

海がきこえる (徳間文庫)