戦士たちよ

船戸与一の最新刊、戊辰戦争を描いた『新・雨月』の上巻を読み終えました。

歴史は、為政者や有名な武将たちの言動を追うことで語られます。しかし、この作品で視点を受け持つ、つまりストーリーを語るのは、歴史においては名も無き男たち、長州軍の間諜、元博徒会津の武将の部下の三人です。

ここで、船戸与一豊浦志朗名義で書いたテーゼをあらためて書くことは無駄ではないでしょう。

“状況の最前線では、暴力のみが機能する”

会社勤めをしている人はもちろん、フリーランスで仕事をしている人も、組織というものと関わることは避けられません。そして、手垢のついたこの言葉を、実感とともに呟いているでしょう。「泥を被るのは、いつも現場だ」と。

船戸与一が描くのは、この“現場”です。暴力のみが機能する、状況の最前線です。この船戸の一貫性には感動すら覚えます。よくぞ……。

戦士たちよ。