胡散臭さ

一般論として、プロレスラーはアスリートとして認知されることはありません。それでもプロレスファンは、数少ないながらも、試合の中で鞘から抜き出された真剣が一瞬の光芒を描いてまた鞘に収まる姿を見ることがありました。リアルとフィクションの曖昧さの中に何を見るか? それは胡散臭さと紙一重でした。そして、だからこそプロレスはプロレス足りえました。

その、胡散臭さをも己の魅力に転じてしまうプロレスラーとは対照的なのがアリスター・オーフレイムです。PRIDEで中堅選手だった彼と、DREAMで強さを欲しいままにしている彼は別人です。

細身のしなやかなシルエットから、筋肉の塊のような巨体に。その肉体の変化を見た者の大半は、ステロイドに代表される禁止薬物の摂取を疑いました。最近では、試合中の、解説をしている須藤元気の「これはオーガニックで出来るカラダじゃない」という発言がありました。これは勇気ある行為です。しかしながら、実況しているアナウンサーや他の解説者からあからさまに無視されました。

アリスター・オーフレイムについて語る時、それが格闘技マスコミであれ、ブログなどに意見を書くファンであれ、皆一様に薄笑いを浮かべているように、私は感じます。「野暮は言いなさんな」と。

一般論として、格闘家はアスリートとして認知されています。その選手に“胡散臭さ”という衣を被せ、なおかつそれが見えない振りをする。これは性質の悪い冗談でしょうか。

アリスター・オーフレイムが潔白なら、それが最も喜ばしいことです。しかし、この問題は疑惑にすらなっていません。何故なら、そのずっと手前で“薄笑い”とともにうやむやになっているからです。

格闘技なんて結局この程度のもの。そんな諦念は持ちたくありません。