日本と中国について考えるとき、わたしが思い浮かべるのは“残留孤児”の悲劇です。
人一人を育てることは大げさでなく一大事業です。自分の人生を賭ける覚悟がなくては決してできないことです。
「口減らし」という言葉があります。戦後の貧しい社会で、他人の子を、それも自分たちに非道をはたらいていた日本人の子供を引き取って育てることに葛藤がなかったはずがありません。
それでも手を差し伸べた人たちが抱いていたのは、親が子を大切に思う気持ちには日本人も中国人もないという人間の根本的な部分での共感ではなかったでしょうか。
どれほど政治家同士がいがみ合おうと、それがすべてではありません。