私の好きな作家:月村了衛
現在、わたしが文庫化を待たずに単行本で追いかけているのは、船戸与一と五條瑛、そして、月村了衛です。
初めて手に取ったのは『機龍警察』。その“完全版”が刊行され、もちろん購入、再読と相なりました。
最初に魅力を感じたのは文体、物語る調子でした。ひと言で云えば、清涼にして涼やか。きりりと引き締まった文章が苛烈な物語世界にぴったりで、それはつまり、この作家は自分が描く小説の世界観と、それを表現する言葉の関係を重視しているということであり、自覚を持っているということです。
この作家は信頼できる。そう思いました。
どの作品も、戦う者たちの物語です。しかし、作中で描写される戦いの激しさだけに目を向けていたのでは、この作家の本質を見誤ります。
では、上記の文体は何に対して有効なのでしょうか。それは、登場人物たちの生き様にです。
この作家の描く人物は、男であれ女であれ、心に傷を抱えています。絶ち難い過去を引きずっています。しかし、それを言い訳にすることが一切ありません。無視するのでもありません、無かったことにするのでもありません。ただ受け入れて、自分の人生を歩んでいるのです。
わたしは、この強さに痺れます。
エンターテインメントとしての魅力に溢れ、文章で綴られた“小説”を読む醍醐味のある、次の作品が待ち遠しいと思える作家です。
- 作者: 月村了衛
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/11/07
- メディア: 単行本
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