ここにも一人

自分で思っているほど、他人は私(あるいはアナタ)を高く買ってはいません。そこを読み違えると足元をすくわれます。

上は自分に一目置いていると過信し、下は権勢を誇る自分に媚びるだけと見下していた男が、自分が使い捨ての道具の一つに過ぎないことを思い知らされますが、時すでに遅し。周囲に仲間は一人もおらず、追いつめられていきます。

そこで、踏み潰されることを潔しとしなかった男の反撃が始まります。

その手にあるのは、当時としては未知の武器の六連発のコルトM1851。

この作品の主人公は、この銃でもあります。残り少ない弾丸数と、煩雑な弾込め作業の精緻な描写が物語を盛り上げます。

そして、銃が銃というだけで威力を発揮するのではなく、その扱いに習熟してこそ最強の武器になるという思想。そこに大藪春彦の影を見ました。

行動を志した者の前には、組織の中での肩書きや地位を己の力と勘違いした愚か者の理屈など吹き飛びます。

大藪イズムの継承者が、ここにも一人。

コルトM1851残月

コルトM1851残月