想像力と創造力

ユニークな視点と鋭い考察に知的好奇心を刺激される、その更新を楽しみにしていたブログがありました。私がブログを始めるに際してhatenaを選んだのも、その方の影響です。

ある記事で評論家の宇野常寛の名前が、それも仕事絡みとして出てきたときには驚きました。と同時に、「機動戦士Ζガンダム回顧録」で宇野常寛を知り、それを興味深く読んだ私としては、それも自然なことと思えました。

宇野常寛の著書が二冊、書店に並んでいます。『ゼロ年代の想像力』と『リトル・ピープルの時代』です。ともに手に取ってパラパラと拾い読みはしたものの、どちらも買いませんでした。

その評論に興味を持ちつつも、扱われている題材(アニメやアイドルを含むサブカルチャー)に疎く、議論の前提(あるいは叩き台)を共有できない状態では“読む”ことはできないだろうという、何とも奇妙な距離を感じてしまったからでした。

そんな私にぴったりの本を偶然にも本屋で見つけ、これは迷うことなくレジに向かいました。濱野智史との対談をまとめた『希望論』です。

「現実」という言葉の反対語は何か。それは「理想」「夢」「虚構」といった具合に時代とともに変化します。では、現在は何でしょうか。

大きな物語」が通用しなくなり、「大きなゲーム(ルール)」によって行動する時代のテレビとネットのあり方とは?

「繋がりを持つ」という意味での“共同体”の存在意義。

アーキテクチャ”という視点。

そして、インターネットと社会の繋がり方。

こういった事柄について、引用したい言葉や文章がたくさんあります。が、まだ新しい本ということもあり、残念ながら止めておきます。

同時代性という点で、今読めて良かったと思います。たんなる解釈に陥ることなく、現在という時間と空間を認識することに真摯に向き合い、ともにビジョンを持って提言をしています。

読み終えて思い出したこと。

仏教では、釈迦の入滅から56億7千万年後、弥勒菩薩が現れて衆生を救済すると云われています。つまり、この世はずっと過渡期なのです。「これが正解」とユートピアが出来上がることはないのです。

だからこそ……、

「人間は一生、学び続けるべきです。(中略)では、なぜ学び続けるのでしょう? それが人間の使命だからです」(『MASTERキートン』)

希望論 2010年代の文化と社会 (NHKブックス)

希望論 2010年代の文化と社会 (NHKブックス)