娘の父親

法廷では、誰もが嘘を吐く。マイクル・コナリーの『真鍮の評決 リンカーン弁護士』は、何が真実かとともに、真実とは何かも問いかけます。この「真実」は、「正義」との言い換えも可能です。

その混沌の中。主人公の弁護士、ミッキー・ハラーの望みは、もちろん高額な報酬をもたらす訴訟で勝利を勝ち取ることですが、それは一部に過ぎません。ともに暮らすことのできない最愛の娘にとって素晴らしい父親でありたい。その想いが彼を駆り立てます。

世の中では、誰もが自分を弁護し、正当化します。その絶え間ない衝突が心をすり減らします。

ハラーは私たちです。強くならなくては、誠実に生きることができません。その残酷なまでの真理を描いて、尚且つページを繰る手を止めさせない面白さ。エンターテインメントの見本のような作品です。

真鍮の評決 リンカーン弁護士 (上) (講談社文庫)

真鍮の評決 リンカーン弁護士 (上) (講談社文庫)