『キミ金』

何事、壁にぶつかったときには基本に返るのが常道です。

井上純一の『キミのお金はどこに消えるのか』は、経済に興味を持った人が手に取るのに最適な一冊です。

まず何より、他の“漫画でわかる〜”と謳っている本との違いは、著者が読者に対してではなく、妻の月さんに話している体裁を取っていることです。

二人の対話によって話が進んでいきますので、読者が情報を一方的に与えられるのではなく、疑問や質問、突っ込みを月さんと共有することで、その場に参加しているかのような“当事者”の気持ちで読めます。

これは、経済が読者にとって他人事ではないという意味での当事者ということと重なります。この読み応えが素晴らしい。

ここ最近、経済成長という古い価値観、幻想を捨て、経済的な規模の縮小と下り坂状況を受け入れて生きていこうという論調が目につきますが、それは貧しさを知らない人の世迷言だと思っています。

贅沢は出来なくとも、健全に暮らせる社会を次の世代に受け取ってほしいと、わたしは思っています。

キミのお金はどこに消えるのか

キミのお金はどこに消えるのか

この漫画の最も素敵なところは、本文にもありますが、腰巻の帯に書かれた月さんのセリフです。

「次、総理大臣になる人、このマンガ読むイイジャナイ?」

いまの総理大臣(あるいは安倍首相)ではないのです。粋(いき)だね。