ボッシュ②

幼いころに、娼婦だった母親を殺人事件で失ったハリー・ボッシュ

その葛藤を克服しても、心の傷は決して消えはしません。

ボッシュが物語に登場する女性たちとロマンスを繰り返すのは、そのことと無縁ではないはずです。

しかし、シリーズが続くなかで年齢を重ね、ボッシュの心は別のものも求めるようになります。

受け継ぐこと。

最新作の『燃える部屋』では、娘であってもおかしくない年齢の新人女性刑事とパートナーを組み導こうとする姿が描かれます。

それに加えて、シリーズの途中から登場した娘とも、当初はぎくしゃく、互いに手探りで接していたのですが、ちょうど良い距離感をつかんだようで、ストレスなく父と娘の生活を送っています。

この作品のポイントの一つに「贖罪」があります。

物語の終盤、それに対するボッシュの態度は厳しい。

優しさとは厳しさだと言った人がいます。

その気高さは、きっと新人の女性刑事と、警察官志望の娘に伝わるはずです。

このシリーズは、大人の鑑賞に堪える、大人の読み物の風格を湛え始めました。