ボッシュ②
幼いころに、娼婦だった母親を殺人事件で失ったハリー・ボッシュ。
その葛藤を克服しても、心の傷は決して消えはしません。
ボッシュが物語に登場する女性たちとロマンスを繰り返すのは、そのことと無縁ではないはずです。
しかし、シリーズが続くなかで年齢を重ね、ボッシュの心は別のものも求めるようになります。
受け継ぐこと。
最新作の『燃える部屋』では、娘であってもおかしくない年齢の新人女性刑事とパートナーを組み導こうとする姿が描かれます。
それに加えて、シリーズの途中から登場した娘とも、当初はぎくしゃく、互いに手探りで接していたのですが、ちょうど良い距離感をつかんだようで、ストレスなく父と娘の生活を送っています。
この作品のポイントの一つに「贖罪」があります。
物語の終盤、それに対するボッシュの態度は厳しい。
優しさとは厳しさだと言った人がいます。
その気高さは、きっと新人の女性刑事と、警察官志望の娘に伝わるはずです。
このシリーズは、大人の鑑賞に堪える、大人の読み物の風格を湛え始めました。
- 作者: マイクル・コナリー,古沢嘉通
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/06/14
- メディア: 文庫
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