今なお船戸与一②

船戸与一が亡くなる直前のインタビュー記事が掲載されている、雑誌「ジャーロ No.53」を手に取りました。

まずページを開いて目に飛び込んでくるのは船戸与一の大きな顔写真。そこから目を離せません。透徹した視線を感じさせる、澄んだ眼。

インタビューに答える言葉の端々から、自らの命が残り少ないことを承知しているのがわかります。死を目前にして、人はこういう眼を持つことが出来るのか。

船戸与一は、評論「ハードボイルド詩論、序の序」のなかで、大略「ハードボイルド小説は作家のパワーが落ちたとき、文芸的な技術で凌ぐことが出来ないものなので、その衰弱は他のジャンルよりも悲惨だ」と書いています。

その死の直前まで、否、間際まで小説を、それも圧倒的な迫力と読み応えのある小説を書いていたという事実は、上記のパワーが落ちていなかった証拠です。

何という作家だったのかと、いまさらながらに感嘆しています。

とても良いインタビュー記事です。それは、船戸与一とともに、インタビュアーの井家上隆幸が良いからです。

二人とも鬼籍に入りました。いまごろ、天国で語り合っているのでしょうか。