新宿の夜

夏に続いて、今年二度目の新宿。

紀伊国屋本店で五條瑛の新刊を購入し、地下のレストラン街でカレーを食べながら昼間からビール。その後、喫茶店ルノアールで蜂蜜ジュレのアイスティーを飲み時間調整。前回と同じルーティンです。

そうして再会したのは、泰山さん。今回は荻窪近辺の古本屋を案内してもらいました。

地方では、もう業態として成り立たないのでしょう。チェーンの新古書店がありますが、個人で営業している古本屋は見かけなくなりました。大学生の頃に神保町が大好きで足を運んでいた身としては、今回の都合三軒の古本屋行脚は懐かしい空気に触れるもので、買う買わない以前に、店内に足を踏み入れた時点で大満足です。

やっぱり良いですね、本の匂いは。

その中の一軒では、一画に古いポケミスがずらっと並んでいて、思わず「うわっ!」と声を出してしまいました。原尞がポケミスへの偏愛を語っていますが、チャンドラーの作品をポケミスのもので見る、手に取ることなんて現在ではまずあり得ません。

それから歌舞伎町に出て、連れて行っていただいたのが、映画『不夜城』でロケが行われた中華料理店。歌舞伎町は近年、安全に遊べる街を標榜して地域として取り組みを行っており、路上スピーカーからは客引きに注意するアナウンスが流れていたり、関係者らしき人たちが巡回していたり路上のゴミを片付けていたりしていて、一見さんのわたしには明るく健康的な街に感じられましたが、その店は建物と建物の間、狭く薄暗い路地を入った先にあり、雰囲気は抜群。ただ出かけただけでは決してたどり着かない店で、わくわくしながら杯を重ねました。

その後は、アントニオ猪木酒場へ。前回は、二軒目は静かなバーでしたが、これもまた良し。店に入ると、店内モニターには往年のアントニオ猪木の試合が。席についてメニューを広げていると、おお~っと、第一回IWGPの決勝戦、対ハルク・ホーガン戦が始まりました。さらに驚いたのは、その会場(蔵前国技館)に泰山さんが観戦に行っていたこと。この会場のどこかに自分がいますよと。この試合はテレビで観た記憶がありましたが、その現場にいた人と、こうして試合を観ながら飲むことになろうとは。

もうね、同じ試合を観ていても目のつけどころが違います。無料でレクチャーしていただいているようなもので、これがまた楽しいのなんの。

特に人生訓や教訓めいたことを伺ったわけではありませんが、ものの見方は考え方であり、それは即ち生き方です。単に旅行をして久しぶりに会ってリフレッシュしたというのとはまた違う元気をいただいたように感じています。

相変わらず、こちらからは何も差し出せず、汗顔の至り。