同時代を撃つ

五條瑛の『Blue Paradise in YOKOSUKA』を読みました。

五條瑛の作品は、三人称の視点が厳格です。“鉱物”シリーズは基本的に主人公の葉山隆の視点で語られるので、相棒の坂下冬樹の姿も葉山の目を通して描かれます。今回は逆、坂下が主人公となり、彼の見る葉山が描写されます。

五條瑛は、船戸与一とはまた違った形で同時代と伴走しています。防衛庁に勤務していたという経歴と、そこで得た知見を活かし、それらをエンターテインメント小説に昇華して東アジアの、あるいは日本の姿の一断面を描いてみせる手腕に脱帽です。

この作家の作品は在日米軍を扱っているものが多く、それらの映像化は難しいでしょう。ですが、映画化やテレビドラマ化が小説の評価ではありません。小説として読んで面白い。それを忘れてはいけません。

Blue Paradise in YOKOSUKA

Blue Paradise in YOKOSUKA